『ナカマ』
目が覚めたとき、まわりは明るかった。昨日は夜に出発して、車の中で眠ってしまったんだっけ。ここはどこだろう。
あたりを見渡す。アタシはどうやら、ベッドに寝かされているらしい。
部屋はそんなに狭くはない。数日前に、彼に運んでもらった物が綺麗に整理整頓されて置かれている。
ベッド脇にあるテーブルの上には、アタシのバッグと着替えが置いてある。
アタシはとりあえず、気を抜けばまた眠ってしまいそうなほどに寝心地のよいベッドから起き上がって着替えを済ませた。
多分アタシに与えられたのであろう部屋を、アタシの過ごしやすいように片付け始める。
コンコン。
そこへ彼がやってきた。
「やあ、ヒメ。もう起きていたのか。おはよう。何してるんだい?」
「おはよ。ここ、アタシの部屋でしょ?アタシの好きなように整理してるの」
「そう。うん、そこはキミの部屋だから、キミの好きなようにしていいよ。それより、おなか減ってない?朝ごはん、準備してるけど、一緒に食べないかい?」
ぐぐぐぅううう。
ちょうどのその時、アタシのおなかが盛大に鳴った。
「………」
「あはは。身体は正直だね。さ、おいで。食堂に案内するよ」
片づけを一旦中止して、アタシと彼はアタシの部屋を後にした。
部屋を出て、食堂に向かう。アタシの部屋からはそう遠くないようで、すぐに着いた。食堂は思ったより広く、部屋の中央に長々しい、西洋風の長テーブルがあり、そのわきに椅子がいくつもあった。
その内の一つに、長い白髪の少女がもうすでに座っていた。
こっちに気付いた彼女はアタシ達の方を見た。そして彼に一言文句を言った。
「遅かったではないか」
「あはは、ごめんごめん。おなかすいたよね」
彼女の恨めしげな視線を気にもとめないで、彼は彼女の不満を軽くいなす。
「じゃ、朝ごはんの前に軽く紹介しとこうか。レン、彼女がヒメ。新しい仲間だよ。そして、ヒメ。彼女はレン。俺の最初の仲間。ま、これからもちょっとずつ増やしていこうかと思ってるんだけどね」
「よろしく、ヒメ。妾のことはレンと呼び捨てでよい」
「よろしく、レン」
「ふふ、そんなに固くならんでもよい。さ、早う食べようではないか」
料理は、彼が作ったのだという。なかなか家庭的な料理が並んでおり、彼のイメージとは合わない。腕がいいのか、味はすごくいい。アタシは食べることに集中した。
「そういえば、そなた、仲間は後どれくらい集めるつもりなのじゃ?」
「んー、そうだね。俺とレンとヒメで今のところ三人だから…。後六人欲しいね。全部で九人がいいな」
「それは何故故じゃ?」
「なんとなくだよ。後の六人も二人のようにだいたい目星はつけてあるんだ。そのうちの何人かとはもう接触してるよ。しばらくしたら仲間になるから、そのときはよろしくね。」
彼は手際がよさそうだ。このまま行けば、アタシの目的も早々に叶えられそうな気がする。
「ん?そういえば、アタシはヒメで、彼女はレンで…あなたはなんて呼べばいいの?」
「あれ?言っていなかったっけ?俺はシュウだよ。でも、お好きなようにどうぞ」
「シュウ、レン。改めてこれからよろしく」
「こちらこそ」
「期待しておるぞ」
仲間も続々集まりつつある。アタシの半身が助かる日もそう遠くはないだろう。これといった活動はまだないが、宣告した日までに必ず仲間を集めて動く。
それまでは、新たな仲間と楽しいときを過ごすのも悪くはない。
不安だったアタシの心はいつしか、これからの未来への期待でいっぱいだった。
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